2012年11月24日土曜日

図書館でのカビ対策について

職場の書庫でカビが発生しています。
まったく知識がないので調べてみることにしました。


■カビ対策の現状

カビ対策はこれまで臭化メチルによる燻蒸が主流だったが、
臭化メチルがオゾン層破壊物質として認定され、2005年以降使用禁止となった。
それをうけてIPMの考えが普及するようになった。
※IPM:Integrated Pest Management
総合的有害生物管理 化学的方法のみにたよらない管理方法
日本では高松塚古墳壁画にカビが発生した問題を機にカビ対策への注目が集まったが
専門家の不足や、知識を共有するネットワークの不備が指摘されている。

■カビについて

胞子が風に運ばれて付着、適度な水分と栄養分を得て「コロニー」(菌糸のかたまり)を作る。

活性カビは湿ってぬるぬるしている、不活性カビは乾燥している。
美術館・博物館・図書館でのカビ被害は好乾性のカビが多い。
大きさは1-200ミクロン。
カビの大きな原因は湿度。相対湿度100%なら約2日、65%なら約3年でカビがはえる。
ホコリは栄養分となる。材質によってもはえやすくなる。

■予防策

温度20度、相対湿度60-65%以下に保つ。
結露をさけるため、急激な温湿度の変化は避ける。
書架の最下段を上げ、通気性を高くする。
空気清浄機(化学物質をださない単純なもの)を使用。
本の天の部分に薄よう紙をかけ、ほこりよけとする。
外壁に面した場所に書架をおかない。おいてある場合は資料を壁からはなす。
1週間に1度、定期的に清掃する。
HEPAフィルターつき掃除機を使用する。
※HEPAフィルター:High Efficiency Particulate Air フィルター
カビ胞子をとらえられる 細かい目のフィルター

■はえてしまったら

カビ発見時には隔離、専門家に相談の上、除去
資料はシリカゲルなどの乾燥剤などとともに紙箱にいれ隔離
資料に薄い用紙などをかけ、扇風機でゆっくり乾かす
ビニール袋に密閉して冷蔵庫、もしくは冷凍庫に入れる
HEPAフィルターつき吸引装置で吸引(スクリーンの上から)、もしくはブラシではきおとす
エタノール(濃度70-80パーセント)でふきとる
不活性なカビは多重フィルターつきの掃除機で吸い込む(小さいブラシ・ノズル等を使用)
発生した場所はHEPAフィルターつき掃除機で掃除、湿度をチェック、家庭用消毒剤でふきとる

■処理時の注意点

屋外で行うか、部屋の中であれば換気を行いつつ、胞子をまきちらさないよう留意
人体に悪影響があるので注意。完全防備する。
処理時に使用したものは密閉して廃棄、廃棄できないものは殺菌。


今すぐできる対策というとやはりHEPAフィルターつき掃除機での掃除、
はえてしまった場合はエタノールでふくか、HEPAフィルターつき掃除機ですいとる  ということのようです。
書架の一番下をあけておくのは、あまり意識したことがありませんでしたが、
通気性のためや、水害の際も有効だそうなので、余力があればやってみようと思います。


<参考資料>

・国立国会図書館. “カビが発生した資料をクリーニングする”. 国立国会図書館.
図書館員がカビのクリーニングをする際の具体的手順・注意事項等について詳しく書いてある。

・木川りか「書籍・資料のカビとその対策」『アジア古籍保全講演会記録集』東京大学東洋文化研究所 2008.3 pp.227-247.
参考となる資料の紹介、カビについて、その詳しい内容が紹介されています。
初心者が読んでもわかりやすく、具体的な方策が多く示されていました。

・文部科学省カビ対策専門家会合報告書「カビの発生予防と早期発見のために」2007.3
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sonota/001/toushin/07051008.htm
カビ対策が未整備な現状について、資料の紹介、今後のぞまれる方策についてなど。
今、カビがはえた場合にどうするかというような具体的なことはあまり書かれていない。
施設環境管理指針(試案)が添付されている。

・『IFLA図書館資料の予防的保存対策の原則』「3保存環境」日本図書館協会 2003. ※国会図書館による日本語訳

温度と湿度について、光や汚染物質、害虫についてなど詳細に説明がある。
カビの対処法については第4節で詳しく書かれている。



ウェブサイトの参照日は2012.11.24です。