2013年5月18日土曜日

絵本の歴史について

絵本の歴史について、かなりおおまかにですが、読んだことなどをまとめます。

◆絵本の原型となったもの  


・ホーンブック(→ のちにバトルドアへ)  

16世紀前半イギリスにて、子供の教則本として使用された、羽子板のような形のもの。
のちに挿絵もつけられ、バトルドアと呼ばれるようになった。

・チャップブック   

17世紀中ごろ-19世紀 はじめはロンドンの出版業者兼書籍商が安い値段で作成し、
行商人の積み荷に入れられ、広く普及した。
民話、歴史物語、ナーサリーライムなど、幅広い内容のものが収録され、子どもの手に渡った。


◆絵本の登場


①1658 世界図絵 コメニウス 

絵のはいった教科書のようなもので、ストーリーはない。

②『かわいいポケットブック』(1744)と『くつふたつちゃん物語』(1765)

初めての子ども向けの本、お話。
ジョン・ニューベリーがロンドンにて出版。

③19世紀後半 ランドルフ・コルデコットの絵本 

絵と言葉が補完しあい物語をつくっており、初の近代絵本といわれる。


◆絵本の黄金期    


①1860年代 イギリス 

彫刻師で印刷家のエドモンド・エヴァンズが多色刷り木口木版を採用し、
ランドルフ・コルデコットや、ケイト・グリーナウェイ、ウォルター・クレインなどの絵本を出版。
当時の絵本はトイ・ブックと呼ばれた。

②1930年代 アメリカ 

ガアグ、ベーメルマンスなど、戦時中にアメリカに逃れた移民による作品が多い

③1960年代 

ブリッグス、センダック、キーツなど、個性的な絵本作家の登場 

◆絵本の発達の要因


・印刷技術の発達

多色刷りができるようになり、絵の表現の可能性が広がった
※印刷技術の変遷
木版画→銅版画→エッチング→銅板印刷→写真製版→オフセット印刷

・子ども観の変遷 

18世紀 教育・しつけを重視
19世紀 子ども時代の遊びの重要性が認められた

・グラフィック・アートの発達 

絵本作家はその専門家ではなく、グラフィック・アーティストであることが多かった。
ウォルター・クレインはアートアンドクラフツ運動に賛同し、
装飾的芸術の表現方法のひとつとして絵本を採用したといわれている。



2013年5月12日日曜日

マイクロフィルムの劣化について

職場でマイクロフィルムの劣化がおこり酢酸臭がしています。
対策などについて調べてみました。

まずは①調査 をし、②各条件に応じて対策を講じる という流れです。

①調査

◆フィルムの種類・素材

フィルムがマスターフィルムかその複製かどうか(※1)、TACベースかPETベースか(※2)などについて確認。それにより取扱いがかわってくる。

※1 最初に作成したフィルムがマスターフィルム(ネガ)で、そちらは保存用として閲覧用にはしないことがのぞましい。
閲覧用には別途複製したものを使用する。複製は、ネガでもポジでも可能。

※2 マイクロフィルムの支持体には、TAC(セルロースエステル)とPET(ポリエステル)がある。  
TACベースのものが酸化しやすいことがわかり、1980年代ごろからはPETベースのものへ切り替えが始まっている。 
TACは光を通し、手でちぎれる。  →TACは光を通さず、黒く見えます。(2013.6.4修正)

◆劣化の状態

酢酸臭がないかどうか。
べたつき/マイクロスコピックブレミッシュ(黄色いしみ)/カビ/傷・やぶれなどがないかどうか、目視等で確認。

◆酸化の度合い

・パッシブインジケータ
・ADストリップ

これにより酸化の度合いがわかり、それに応じて対策を考えることができる。
また酸化のひどいものとそうでないものは隔離して保存することがのぞましい。

◆包材

金属や酸性紙であれば交換がのぞましい。
酸性紙かどうかは、中性紙チェックペンで確認できる。

◆温湿度

データロガー等により継続的に確認をする。
マイクロフィルム保存のための温湿度については、JIS Z 6009 銀−ゼラチンマイクロフィルムの処理及び保存方法ISO 18911-2000 (現像処理済み安全写真フィルム-保存方法)を参照。
温度は20度以下がのぞましく、長時間にわたり25度を超えてはならない。
TACとPETのフィルムを同一の場所で保存する場合、永久保存での推奨される相対湿度は30%。酢酸臭が出始める期間は温度24℃、相対湿度50%で約30年。



②対策
劣化がひどいものは緊急対策を検討。またそれ以外ものも、日々のメンテナンスにより状態を改善する。

◆緊急対策
自館での重要度や他館での所蔵状況なども勘案し、対策を検討する。

・デジタル化やPETベースのものの再作成
・廃棄

◆その他の対策・メンテナンス

・調湿剤、乾燥剤、吸着剤等の使用
・キャビネットの清掃・新調。調湿キャビネットの使用。
・TACベースとPETベースのフィルムの分離
・包材の交換
・TACベースのフィルムの酢酸放散(まき直し)
・取扱い方法の改善。素手で触らないなど。



<参考資料>

・赤迫照子. 広島大学図書館におけるマイクロ資料劣化対策 : 原因と対処 <短報>. 広島大学総合博物館研究報告 . 2009, (1), p.39-44. http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00028719, (参照 2013-5-11).

・中尾康朗. 九州大学附属図書館所蔵マイクロ資料の劣化状況調査と分析 : 中央図書館における調査と長期保存のための考察. 九州大学附属図書館研究開発室年報. 2010-03-31, 2009/2010, p.29-38. http://hdl.handle.net/2324/18322, (参照 2013-5-11).

・田﨑淳子. “マイクロフィルムの保存対策-まずはサンプル調査から-”. 日本図書館協会. http://www.jla.or.jp/portals/0/html/hozon/hozonkanri/seminar20080801resume.pdf, (参照 2013-5-11).

・国立国会図書館. “マイクロフィルム保存のための基礎知識”. 国立国会図書館. http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data/pdf/microfilm2012.pdf, (参照 2013-5-11).

・安江明夫. “マイクロ資料の劣化-原因と対処 ”. 東京大学東洋文化研究所図書室. http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~library/kouenkai/report/3_yasue.pdf, (参照 2013-5-11).