2015年12月26日土曜日

『職業としての大学教授』潮木守一

この本を読みました。
 
 英米独仏と日本の、大学教員をめぐる諸制度の比較です。

日本の特徴としては、
  • 一大学しか経験していない教員の割合が高い(独では同一大学内での昇進は禁止)
  • 大学教員になる際、その大学の採用試験以外の、共通の資格試験などがない(独では論文審査、仏では共通試験がある)
  • 教員になってからの評価制度や給与体系が確立されていない(英ではHEFCEが業績を評価し研究費を傾斜配分。米では大学間の給与の差が大きいので競争がおきる)
  • 博士号取得者の、大学教員以外のキャリアパスが少ない(独では企業へ就職の道がある。)
  • 博士課程の学生が在学中に研究や教育により収入を得る方法が少なく、また学費を親が負担する確率が高い(独ではこの時期に研究員として収入が得られる道がある)
とのこと。

その他興味ぶかいと思ったのは、英や仏では教育専門の教員がおり、特にフランスでは高校教員が大学教員になるキャリアパスがあるいうことでした。


どの国の制度も、全体を見ると長所もあれば短所あるようで完全にうまくはいかないのでしょうが、制度面でとりうる選択肢はたくさんあるのだなとわかりました。

2015年12月5日土曜日

『イギリスの大学・ニッポンの大学』苅谷剛彦




この本では、まずオックスフォード大学の教育方法と英国の高等教育の現況の紹介のあと、それをふまえ日本の現況と展望が書かれています。


第一部では、筆者が赴任していたオックスフォード大学の教育の概要が紹介されます。
たとえば
  • 大学は、試験実施・卒業認定等を行う「ディパートメント」と、より生活に根差し少人数教育の基盤となる「カレッジ」から成る。
  • 教育の中心は、カレッジにて週に1回1時間、教員1人が学生1-3人を指導するチュートリアルと呼ばれる授業。 課題文献リストを読みレポート作成(毎回A4約10枚)した上でのぞみ、議論や質疑が行われる。なお、それを支えるのは各カレッジの豊富な基金とのこと。
  • そのほか、学科が開講するクラスやレクチャーがあるが、各講義の出席でなく学期末の試験(3時間でレポート3本を書くような試験)の合否により評価される。なお出席人数はそれらの授業でも20-30人。
  • 入試では、学力テストのほか、専攻分野への適性試験・論文提出・インタビュー等が行われ、カレッジでの面接で最終判断がなされる。教員は、自分が指導したいかという基準で学生を選考する。
ただしカレッジ制は英国でも珍しいそうです。
英国では、このような教授法を通じて、社会へ貢献する一部の「教育ある市民」「反省力ある実践家」を育てることを社会が容認していることが日本と異なるとの指摘でした。


第二部では、次第に教育機会を増加させてきた英国の政策と、それにともなう教育費の増大、その対処としての授業料増額、またそこにみられる社会矛盾(授業料の増額⇔教育機会の拡大)などが書かれていました。


第三部では、それまでの内容を参考に、日本の現状と今後の展望が述べられています。
大学教育の今後の実質化を論じる際、たとえば学修時間を増大させることが指摘されているが、まず企業の採用活動における評価基準や、財政基盤の弱さ等の問題がもっと論じられるべきとのことです。

初心者でもわかりやすい本でした。
日本で大学生は入試でも授業でも「顔の見えない大衆」の一人と扱われるのに対し、オックスフォード大学では、「顔の見える」関係性がある、という視点が印象的でした。