2016年1月3日日曜日

『絵本・物語るよろこび』松居直



この本では、福音館書店で「こどものとも」を創刊した編集者の松居直さんが、いくつもの絵本の表現の意図や、それが子どもにとって持つ意味を説明している。
ここに書かれていることを心にとめておくと、子どもと絵本を読むことの可能性が何倍にもふくらむと思った。

たとえば
「言葉は、喜びと楽しみの中で聞く(読むのではありません)ときにのみ心に残ります」p12

つまり、絵本を与えて勝手に読ませることと、共に楽しみながら親が子に読んであげるのでは、絵本の持つ意味が全く違い、後者のとき、子どもは言葉をよく味わい、絵本の絵と、耳から聞く言葉から物語をイメージすることができるとのこと。
読んでもらうこと自体が楽しいということと、耳から聞くときには読み手の感情が自然と加味されて味わい深くなることによるんだろうか。

「子どもは絵本の絵を読みます」p26

たとえば『どろんこハリー』を、大人と子どもではそれぞれどのように読むかが説明されている。
ここで指摘されているように、大人は絵と字から「あらすじ」を知り、それで満足した気になってしまうことが多い。
でも子どもは絵の細部を見て、登場人物がどんな気持ちか、どんなことが好きなのか、絵に書かれていることをヒントに、書かれていない部分までを想像する。

これを理解すると、ゆっくり読むこと、同じ絵本を何度も読むことが子どもにとって大切なことがわかる。

「絵本は好き嫌いや、”かわいらしい”という感覚で選ぶのではなく、良し悪しで判断すべきです。その良し悪しの判断の基準を与えてくれるものは、質の良い定評のある絵本を子どもたちとともにみることによってしか会得できません。」p51

絵本を「良し悪し」で選ぶこと自体、「良い」は何に照らして「良い」のかという問題もあるだろうし、いろいろな考えがあるだろうし、私自身は「好き」な絵本を選ぶことにもそれなりの意味があると思う。
ただ、子どもの可能性を長期的に伸ばすという意味で「良い」絵本を、大人が探り子供に届けようとする努力はあってもいいんじゃないかと思う。
届けた後の行く末は見守るしかないが。


全体的には、編集者の方の目線だけあり、絵本の絵が物語の何をどのように語っているのか、という裏話(?)が明かされているのが本書の特徴。
たとえば構図一つとっても登場人物の感情を巧みに表現する工夫がなされ、またその手法も多岐にわたっていることがわかった。